医師が解説DOCTOR COMMENTARY

脱毛は出力を上げるほど
効くのか?

医療脱毛の出力は「上げれば良い」というものではありません。
毛嚢炎・火傷などの合併症を常に気にする必要があります。
そもそも、「出力」という言葉自体があいまいです。
他の医院のホームページでも間違った意味の使われ方がされたりしています。

レーザーの出力について医師の立場から解説します。
※注)毛嚢炎=毛根に炎症が起きた状態を指します。通常は細菌感染によるものが多いですが、脱毛の場合は
レーザーの照射により毛包に炎症が起こります。ニキビに似たような状態になることが多いです。

医師 丸本 桂三

目次

POINT01

医療脱毛は出力が高いほど
効果があるのか?


これは議論の余地なく出力を上げるほど効果があります。

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POINT02

では、出力を上げるほど良いのか?


いいえ、そう単純ではありません。出力を上げれば上げるほど、火傷や毛嚢炎などの合併症が起こりやすくなります。

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POINT03

そもそも出力って何なの?


【まとめ】(詳しくは下のリンクをクリックしてください。)
脱毛レーザーのエネルギーの量です。「6J」「8J」というようにジュール(J)という単位で表します。同じ6Jでも、時間をかけて照射するのと、一瞬で照射するのとでは、効き目が違います。他にもいろんな要因があり、単純にジュール数だけで効果を比べるのは無理です。

「そもそも出力って何なの?」を
さらに詳しく

基本的に脱毛レーザーのエネルギーの量のことです。通常はジュール(J)で表します。正確には単位面積当たりのエネルギー量で表すのでJ/cm²で表しますが、そこまで厳密だと分かりにくくなるので以降は「ジュール数」と書かせていただきます。

ジュール数ですが6Jと8Jはどっちが強いかと言えば、単純に言えば8Jです。
しかし、そんなに単純な話しでもありません。

パルス幅と言って、そのジュール数を「どれくらいの時間で照射するか」によっても違います。
たとえば、同じ6Jでも、
①パルス幅を3ミリ秒で照射する
②パルス幅を30ミリ秒で照射する
では、②はじっくり焼いている感じですから、①の方が温度は上がりますし、実際に痛くなったりします。(1ミリ秒は1秒の1千分の1の長さです。)

さらにスポットサイズ(照射する部分の面積)によっても違います。
たとえばジェントルの
・直径24mmのスポットサイズのハンドピース
・直径18mmのスポットサイズのハンドピース
を比べると、同じ6Jで照射したとしても、24mmのほうが熱がこもりやすいです。特に中心部分になればなるほど熱がこもりやすくなるので、同じジュール数だと危ないので弱くしなければいけない場合もあります(あるいはパルス幅を増やすか)。

さらにレーザーの種類によっても同じジュール数でも効き方が違ってきますし、機械によっても違います。
ですので、6Jと8Jを比べても、8Jのほうが効果が強いとは限りません。

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POINT04

なぜ、「高出力が良い」と
言われるのか?
=美容クリニックのポジショントーク


【まとめ】(詳しくは下のリンクをクリックしてください。)
美容医療の口コミですが、Twitterもブログも美容クリニックのステマが非常に多く、美容クリニックのステマで「蓄熱式は出力が低いから高出力のジェントルで受けるべき」というポジショントークがかなり多いです。
ご自身の経験に基づいて書かれている方も多いですが、それ以上にステマの量が莫大ですので、よく御注意いただいたほうが良いと思います。

「なぜ、『高出力が良い』と
言われるのか?
=美容クリニックのポジショントーク」
をさらに詳しく

ジェントルなどの熱破壊式脱毛機を使っているのを売りにしている美容クリニックが蓄熱式しか扱わないクリニックを「効かない」という根拠として
・熱破壊式はレーザー出力が高い
・蓄熱式はレーザー出力が低い
と書いていたりします。
もしかしたら、これを書いている人が知らないのかもしれませんが、事実としては蓄熱式のほうが出力が高い場合が多いです。 当院のラフィーユは蓄熱式ではありませんが、ジェントルよりはじっくりと熱を入れます。そのため、基本のジュール数の設定はジェントルよりも高くなります。ラフィーユはジェントルよりもゆっくり熱を入れますので温度の上がり方がマイルドになります。そのため4回照射することで十分に温度を上げます。
結果的にラフィーユが照射するジュール数はジェントルの何倍にもなります。しかし、瞬間的に照射するジュール数ではジェントルがラフィーユの何倍にもなります。蓄熱式になると、その差はもっと広がります。ジェントルにしてもラフィーユにしても蓄熱式にしても、脱毛に必要なジュール数を照射すれば脱毛が可能なのです。

Twitterやブログなどを見ていると「熱破壊式で出力を上げてくれるクリニックが良い」という論調の投稿をよく見かけますが、どこかの美容クリニックのステマをやっている場合がかなりあります。どれがステマでどれがステマじゃないかを見極めるのは難しいですが、美容の口コミはステマだらけですので、よくご注意いただいたほうが良いと思います。

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POINT05

出力を上げると合併症・副作用も
起こりやすくなる。


【まとめ】(詳しくは下のリンクをクリックしてください。)
医療レーザー脱毛ですが、毛根周辺組織を熱で破壊することで脱毛します。つまり、「ヤケドさせる」ということです。 強くすればするほど効果が上がりますが、その分、合併症も起こりやすくなります。
当院では安全を第一に考えた上で、なるべく効果がある出力を目指すようにさせていただいております。

「出力を上げると合併症・副作用も
起こりやすくなる。」をさらに詳しく

医療レーザー脱毛ですが、毛根周辺の組織を破壊することで毛が生えてこないようにします。毛根周辺の組織を「ヤケドさせる」ということです。ヤケドですので炎症が起きます。炎症は程度が少ないと吸収されて「特に問題なし」ということになります。「少し赤くなる程度」で済んだりします。
しかし、あまりに強いと毛嚢炎がひどくなります。「強くすればするほど効果が上がる」ことは間違いないのですが、「強くすればするほど毛嚢炎のリスクも上がる」のです。

皮膚のメラニンですが、一番たくさん含まれているのは「毛根の中の毛」です。でも、毛以外に表皮にもメラニンがかなり含まれています。
医療レーザー脱毛のレーザーは
・なるべく表皮のメラニンに吸収されないけど
・なるべく毛根の中の毛に吸収される
という二つの条件を満たした単一波長のレーザーを使用しています。
でも、やっぱり少しは表皮のメラニンに吸収されてしまいます。出力を上げ過ぎると表皮のメラニンに吸収されてしまい、表皮の温度が上がり、表皮がヤケドする可能性があります。これまた、「強くすればするほど効果が上がる」ことは間違いないのですが、「強くすればするほど表皮のヤケドのリスクも上がる」のです。

そのため、当院では
・なるべく副作用が出ない範囲で
・なるべく効果が出る出力
での照射を標準にしています。

必要があれば出力は上げていくべきですが、やはり安全第一であるべきだと考えております。

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医療脱毛についてその他のポイントはこちら

文責
医師 丸本 桂三
(あおばクリニック技術統括アドバイザリー)
経歴
昭和62年3月 東京大学医学部医学科卒業
昭和62年6月 東京大学医学部附属病院勤務
平成23年 みずのクリニック(現あおばクリニック新宿院)アドバイザリー就任

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